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堀田経営コンサルティング事務所
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カテゴリーを超えたセット組みを行い、お客様の生活シチュエーションの変化を訴えかけます
[記事公開日] 2008/08/25
[最終更新日] 2019/09/14
目次
1.計画購買と非計画購買について
2.クロスマーチャンダイジングについて
3.購買行動の4パターンとクロスMD
4.メーカー・家電量販店・お客様のメリットとは?
5.家電量販店がクロスMDに取り組みにくい理由
6.クロスMD訴求はこう考えよう!
売上高を向上を狙う場合、「レジ客数」か「客単価」のどちらか、もしくは両方を引き上げることが必要です。
そのため、レジ客数が少なければ、必然的に客単価を上げねばなりませんが、それにはお客様に「売場での新しい発見」を提供することが大切であり、この「新しい発見」には、
① 付加機能の新しい発見
② 必要性の新しい発見
―――の2つがあると筆者は考えています。
①については「電子レンジを購入したい(計画購買)」と来店されたお客様に対し、購買想定金額よりも高い、高付加価値電子レンジの“利便性を発見”してもらい、購入いただく場合が該当します。
これに対し、②は他の商品の購入目的で来店されたお客に対し、「まったく購入を意識していなかった商品(非計画購買)」の“必要性を発見”していいただく場合が該当します。
いずれも売場の訴求が大切ですが、これら2つのうち主に②の「新しい発見」を提供するのがクロスマーチャンダイジング(以下、クロスMD)の主な目的です。
クロスMDとは、「カテゴリーに縛られず、一つの売場やコーナーで生活提案や関連商品の販売を行う展示訴求のこと」です。
メリットとしては「一ヶ所で必要な商品が揃えられたり、買い忘れの防止、さらには“新しい生活シチュエーション”を連想させることでお客様の購買意欲を高める」ことが挙げられます。
これは家電製品でも有効であり、特に「各メーカーの異なったカテゴリーの製品を自由に組み合わせることができる」のはメーカーにはできない「店舗の特権」です。
また、クロスMDは一般的に「買上点数向上に貢献する」と考えられていますが、“結果的”に「一品単価も向上する場合」もあります。
例えば、洗濯機を買いに来られたお客様が「空気清浄機・エアコン・ふとん乾燥機・洗濯乾燥機・クリーナーなどPM2.5をテーマにしたクロスMD訴求」を見た場合、「PM2.5を考えれば、乾燥できる洗濯機がいいかも・・・」と洗濯(専用)機から単価の高い洗濯乾燥機を購入される場合などが該当します。
このようにクロスMDは関連商品のまとめ買いだけでなく、クロスMD訴求された「複数商品のうちの一品」の買上点数・一品単価向上に役立つ訴求だといえます。
図1:購買行動の4パターンとクロスMDの種類
図1は「購買行動の4パターンとクロスMDの種類」であり、次のようになります。
①顧客想定型クロスMD
お客様が「テレビを買いにいくので、ついでに電子レンジも見てみよう」というように「何の脈絡もテーマもないが、来店以前にお客が購買を想定している場合」に対応するクロスMDです。
脈絡が無いため、「クロスMDのテーマ想定は難しい」ですが、家電製品にはシーズン需要のあるものが多く、異なったカテゴリーキャンペーンの商品を組み合わせてシチュエーションを考えるのも一つの方法です。
例えば、8月で「冷蔵庫キャンペーン」や「デジカメ・ビデオカメラキャンペーン」などが入っていれば、各キャンペーン主力商品を一機種ずつピックアップし、集合展示してみるといったものです。
②需要想起型クロスMD
「今日はテレビを買いに来たが、一緒に外付けスピーカーが展示されていたため、必要性を感じ購入した」という、“もともと買う気はなかった・購入を忘れていたお客様”に気付きを与えるクロスMDです。
主に「お客が目的にしている商品にプラス一品の関連商品」というパターンが多いのですが、しっかりと取り組まれている店と全く意識していない単品売りの店舗間格差が見受けられます。
③テーマ一致型クロスMD
シングルやブライダルのように「お客様がテーマを持って来店され、そのテーマにあった商品を全て購入するという計画購買」に対応するクロスMDです。
あるカメラ系量販店では通常のシングル展示に加え、「身だしなみ家電セット」や「グルメ満喫家電セット」の展示訴求をして「シングルセット」を見に来た“計画購買”のお客様に“新しい発見”を提供し、単価UPを図っていました。
このようにシングルやブライダルは売場スペースがあるなら、複数セットを訴求したり、高単価商品を組み入れると効果的です。
例えば、シングルセットにパソコンを組み入れた訴求自体少ないですが、ハイエンドパソコンを組み入れるのも一つの方法です。
要は「この商品がいる・いらない」を決めるのはお客様であるため、不要であればセットから外して販売すればいいだけです。
それよりも店舗としては「ハイエンドパソコンのある生活のメリットを十分売場で表現できているかどうか?」ということが重要であり、「お客様に選択の機会を提供する」ということが大切です。
④情報発信型クロスMD
お客様が全く意図していなかったテーマでクロスMDを行い、「こういった快適な生活をしたい」・「購入すれば自分の生活はこう変わる」ということをイメージさせ、非計画購買を促進させるクロスMDです。
図2はクロスMDのテーマになりうる「行事・記念日」や「お客様の生活」をあらわしたものです。
特に図中の「お客様の生活」を考えたクロスMDは家電量販店では極端に数が少ないのが現状ですが、お客様に非計画購買を促すには重要な項目になってきます。
また、お客様の「生活シチュエーション」を考えたクロスMDはネット通販にはできない項目であり、ショッピングの楽しみも提供できるため、力を入れていきたい取り組みです。
図2:クロスMDのテーマになりうる「年間の行事・記念日」など
図3:クロスMDがもたらすメリット
クロスMDはメーカー・家電量販店・お客様の三者にメリットをもたらします(図3)。
メーカーにすれば、「あるテーマをもとに自社商品を軸に、他社商品を組み入れたクロスMD」を家電量販店に提案することで、受け入れられれば「通常コーナー」以外に他カテゴリーやステージで自社商品が展開できるため、露出度が向上し、結果として販売台数向上に貢献します。
特に自社商品が「拡売機種」に指定されなかった場合、「他のカテゴリーの他社・自社拡売機種を交えたクロスMDを考える」ことで露出度を向上できるため、「本部商談で単品型番が優位に立てなかった場合、店舗営業でクロスMDを提案」することが大切です。
次に家電量販店のメリットですが、購入を予定していなかった「非計画購買」が増え、客単価が向上します。
また、クロスMDはネット対策にも有効です。
家電量販店ではo2oをはじめ、システムでのネット通販対抗が目立っており、これらシステムは非常に重要ですが、商売の原点は「人」と「商品」です。
「なぜ、店舗が支持されなくなったのか?」という根本問題を考えれば、
①販売員数減少・システム依存による、お客と販売員の絆の希薄化
②メーカーのカテゴリーアイテム数の減少
③単品訴求中心の売場
④テーマ性の欠落
―――などが考えられ、「ネットの商品ページと変わらない、楽しくない売場」に原因があります。
①の販売員減少は小売業の経営上、仕方ない面もありますが、③の単品訴求中心の売場はネット通販の“恰好の餌食”です。
単品訴求中心の売場はアマゾンなどビックデータを利用した「この商品を購入された方はこのような商品も・・・」という訴求により、追加提案でも「すでに売場訴求で負けている」のですから、お客様を取られて当然だといえます。
また、「パソコンを買いたい」という漠然したイメージを持つお客様にとって「ネットは比較しにくく、選びにくいため、店舗に来店」しますが、「この型番のパソコンを買いたい」という型番指定のお客様はネット購入が容易になってきます。
ここで「店舗がネットと同じ単品訴求であれば店舗としての存在意義も無く、勝ち目はない」ため、クロスMD訴求の増加はネット通販との差別化、お客様の新しい生活の創造につながるというメリットがあります。
最後にお客様のメリットですが、潜在的に抱いていた憧れの生活がクロスMD訴求を見ることにより、顕在的な欲望に変わります。
ショッピングのワクワク感が湧き、自分の生活が「どう変わるか?」をイメージでき、それらの商品を購入することによって「予想していなかった快適な生活」を手に入れられるというメリットが生まれます。
このように「関わる全員にメリットを提供」するクロスMDですが、家電量販店であまり普及していないのは、なぜでしょうか?
その理由として図4にある、①カテゴリー担当制と②売場のメンテナンスがあげられます。
図4:家電量販店におけるクロスMDの阻害要因について
家電量販店では商談を行うMD・バイヤーをはじめ、店舗担当者に至るまでがカテゴリー担当になっており、カテゴリー売上が評価にも影響するため、グループ、カテゴリーを超えた商品を組み合すという発想が出にくい環境にあるからです。
余談になりますが、もし、商談でお金の話以外に「あるテーマを持ったセット販売(クロスMD)」などの商談ができれば「単品商談の条件が厳しい現在、シングルやブライダルのセット補填のような追加補填の商談」の可能性も出てくるのではないでしょうか?
また、カテゴリーを超えた展示を行う場合、店舗では「誰がメンテナンスを行うのか?」という問題や「メンテナンス不足」が心配されます。
これらが家電量販店で「クロスMDが普及しにくい理由」になってきますが、この足かせを超えられるのが、カテゴリー担当を超えた存在の「店長・副店長」です。
クロスMDは「客層によって効果が違う」ことが多いため、その展開の大半は「自店で考える」ことが大切になってきます。
こういった地域性の面からも、店長・副店長の強力な指示のもと、自店の地域特性に合わせたクロスMDへの取り組みが望まれています。
図5:クロスMDへの取り組み手順
図5は「クロスMDに取り組む手順」を示したものです。
図にあるように、まずは「お客様の買い物の理由」を正しく理解することが大切です。
そのうえで「生活シーン」という“切り取られた場面”で訴求を考えるのではなく、「生活シチュエーション」という“お客様の生活状況”で考えてください。
例えば、「掃除」を「生活シーン」という“場面”で考えた場合、「クリーナー単体の付加価値訴求」という発想になり、関連商品といっても紙パックくらいしか浮かびません。
しかし、これを「生活シチュエーション」という「“場面”が連続した“状況”」として「お客様の部屋数」・「精神面」・「生活パターン」などを考えた場合、お客様は掃除に時間や手間を掛けず、「楽してキレイな家に住みたい」、「趣味や学習、料理などに時間を回したい」などの根本目的が浮かび上がってきます。
「楽して時間にゆとりができる生活」というテーマなら、「高圧洗浄機での浴室掃除、リビングにはロボット掃除機、ベッドで部屋を占領され、小回りの利きにくい寝室や物であふれている子供部屋にはサイクロン式 スティッククリーナー、汚れやすいコンロはガラストップコンロやIHクッキングヒーター」というように「家全体を楽にキレイにできるクロスMD訴求」が実施できるでしょう。
また、図2で示した「行事・記念日」は図5下側の「お花見」の考え方を参考に、それぞれの行事・記念日を検討すると「考え方」が見えてきます。
ここでのポイントは“想像力”を働かし、「関連商品」を拡大解釈してイメージするということです。
図5のお花見では、「3月末~4月初は花粉シーズン。花粉といえば“マスク”」、「夜の花見ではランタン・懐中電灯があった方が便利!」というように考えます。
さらに、考え方の例をもう一つあげてみましょう。
図6:PM2.5に見るクロスMDの発展可能性
図6はPM2.5を題材にしたクロスMDですが、家電量販店の実際の訴求では空気清浄機の単品訴求が目立っていました。
しかし、カメラ系量販店では早い時期からエアコンにもPM2.5訴求を行い、該当するエアコン数台を空気清浄機コーナー近くに置いている店舗もありました。
これに加え、地域電器店では訪問時に「布団乾燥機」や「洗濯乾燥機」の提案を行い、客単価UPを図っていた事例も多くあります。
浴室暖房乾燥機というと「そこまで?」という感想を持つ方も多いでしょうが、地域電器店やガスショップでのシステムバス提案では、常識的な商品になっており、この時とばかりにPM2.5の話題を持ち出してします。
家電量販店で浴乾の販売は難しいでしょうが、PM2.5では図6のクリーナーまではしっかりと押さえておきたい商品です。
以上がクロスMDの考え方ですが、クロスMDでお客に「新しい発見」をしてもらうには、家電量販店・メーカーは「新しい発想」を持つことが大切だといえるでしょう。
家電量販店の店舗としては、もし、メーカーが自社製品の枠を超えた「叡智をつくしたクロスMD提案」を持ってきたら、それに応える“気概を持った店舗”であってください。
お客様の生活シチュエーションを考え、テーマを選定し、どのような商品を組み合わせるかを考えるのに、特別な「才能」や「能力」は関係ありません。
必要なのは「センス」と「発想力」であり、これらは訓練すれば誰でも磨けるものです。
接客技術同様、「センス」・「発想力」を訓練し、リアル店舗最大の強みである「商品」と「提案」、そして「人間力」で同業他社やネット通販と勝負していただきたいと思います。
一級販売士 堀田泰希
堀田経営コンサルティング事務所 代表
●カスタマー・クリエーター
●1962年生まれ 大阪府大阪市出身
●大手家電量販企業の幹部職を務め、2007年 堀田経営コンサルティング事務所を創業。マーケティング・営業に特化した研修・コンサルティングを行い、一部上場家電量販企業、大手家電メーカー販社での企業内研修は年間約60本を数える。中小企業は大阪限定とし、年間延べ100回を超えるコンサルティングを実施。
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お客様が欲しているのは、商品を手に入れ、使用したときに得られる「感情」であり、商品はその感情を湧き立てる手段にすぎません。
この「感情」こそ根源的価値であり、それを考えるのがFABE分析ですが、現在のFABE分析の99%は不完全で本質にまで至っていません。
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